多様な解釈を喚起する戯曲(8/29)
3回に渡った岩松作品を結末まで読み進めました。
前にもお話がありましたが、劇作の歴史的な流れを知ることもこの講座の一つの魅力となっています。
それまでの声を張り大きく動き回るような演劇がどちらかというと子供っぽい演技体、
岩松作品のような、いわゆる「静かな演劇」は大人っぽい演技体、
と村上さんは表現します。
みなさん、結末まで読み切った感想として、
姉と弟の親密さ、特にラストのじゃれ合うといった雰囲気に、
兄弟という関係性としては近すぎるという、違和感や気持ち悪さを感じたようです。
今回はとにかく色々な解釈が出て、
村上さんも過去に自分で読んだときより更に面白くなったと言います。
女性が髪を下ろして見栄えを変えるという仕草一つ取っても、
それが夫以外の男性を意識したものと捉える人もいれば、
他の女性を意識したものと捉える人もいました。
小道具の使い方も登場人物や物語の印象に大きく作用していて、
ガラス玉(スノードーム)という小道具が表すのが、
「こちら側の世界とあちら側の世界」というメタファという意見も出て、
特に終盤の沈黙の中でこのガラス玉を手に取るシーンというのは、
前後のト書きや言葉数少なな台詞から、
みなさん色々な想像力が喚起されたようです。
解釈の幅がある、想像力を喚起されるというのは良い戯曲の証拠だと村上さんは言います。
この講座ではト書きも受講生が役と合わせて交代で読んでいますが、
今回はト書きにも読んでいて感情が乗って、
もうひとりの登場人物のような気持ちで読んでいたという感想も出ました。
ト書きの言葉の表現の端々にまで感情や情景が浮かぶような、
想像力をかき立てられる戯曲でした。
担当:広瀬
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